ボロジノ日記

今はボロジノで暮らしています。一人で時間があるので読書や音楽や映画、その他もろもろ書き綴ります。

我々の内なる細菌の危機

昨日読んだ本の紹介です。

「失われてゆく、我々の内なる細菌」マーティン・J・ブレイザー

honto.jp

この本は読んでいて興奮しました。地球温暖化の危機と同様に、ヒトの危機(共生している常在細菌を含めてヒトという小さな宇宙が成立している)を多くの人に伝えたいとの思いが高まります。

人間の体には、皮膚の表面から口、胃腸などの臓器に多くの細菌が共存しています。人の細胞数は30兆個に対し、常在細菌などの微生物は100兆単位(重さは数キロ、遺伝子総数は200から800万でヒト遺伝子の100から数100倍)で一つの臓器といっていいほどの存在です。細菌を含めてヒトなんだということが良くわかります。

 

で、何が問題なのか

近代医療で人の生命を救ってきた抗生物質が、ぜんそくやアレルギーなど現在病の原因ではないかとの研究結果がこれでもかと示されていきます。抗生物質はカビが生成する物質で細菌を殺すものですが、抗生物質のヒトへの投与で常在細菌が大きなダメージを受けていることがわかったのです。そして、常在細菌とそれへの抗生物質の悪影響がヒトの成長や免疫に大きくかかわっている可能性が示唆されていきます。

 

健康診断で悪者とされているピロリ菌ですが、胃がんとの深い関係だけで悪者扱いされていますが、逆に食道がんぜんそくなど他の病気を抑制しているという調査結果には驚きです。ピロリ菌はヒトと共生してきた常在細菌なのです。他にも機能をしられていない常在細菌が人間の成長や免疫のコントロールなど大きな役割を果たしていることもわかってきています。

 

風邪や気管支炎などで子供のときから抗生物質を投与されてきたことが、病気の原因となる細菌だけでなく、有用な常在細菌にもダメージを与えているのです。抗生物質の投与が既に知られている耐性菌の増加(薬が効かない!)以外にも1型糖尿病やぜんそく、アレルギー疾患、クローン病自閉症セロトニンは腸で多く生成)など現在増えている病気とかかわりが大きい。そしてマウスの実験では一時的な投与でも、その後も常在細菌への影響が続くようです。

 

怖いのは、家畜を早く大きくするために抗生物質を餌にまぜることが有効だとわかっていて実際に行われていることから、人間も間接的に抗生物質を食物から取り込んでおり、このことと近年、人間の身長が伸びたことと肥満が増えたことと関係している可能性があること。病気で投与されなくても抗生物質から逃れられないのです。今では家畜に抗生物質を与えるのはヨーロッパでは禁止されたそうです。日本では・・・。これをやめなければ、今の世代から次の世代へと、どんどんヒトの小宇宙が壊されていく。

 

他にも、病原菌となる細菌に感染するためには通常は多くの菌が必要ですが、抗生物質を投与された直後は常在細菌が少なる影響で、数個の菌だけで感染するようになるそうです。病気から回復するための抗生物質が、逆に人体を脆弱にもするのです。

 

日本でも、耐性菌(薬が効かない感染症が増えるのでこれだけでも怖い)を抑えること以外にも、多くの現代病のもとになっている可能性のある抗生物質の乱用を抑える措置をとる必要があります。個人でも、できるだけ抗生物質を取らないで、常在細菌を守るような自己防衛が必要ですね。

 

赤ちゃんは子宮のなかでは無菌ですが、生まれるときに母親の膣から常在細菌をもらうそうです。帝王切開だと細菌がもらえないので、ぜんそく等の病気になる確率が上がるそうです。また体が大きく成長する3歳までに抗生物質を投与されると、常在細菌がかく乱されて、ずっと大きな影響が残るそうです。肥満体質なども関連する可能性があります。子供をもつ親やこれからもつ夫婦など、子供を守るためにも、この本は読むべきですね。