仮称なんたら日記

読書や音楽や映画、その他もろもろ書き綴ります。

ノルウェイの森

少し前、人間ドックを受けた。

検査の合間に読む手ごろな文庫本が無かったので、知人からもらった「ノルウェイの森」を持っていった。村上春樹はずっと前に「羊をめぐる冒険」を読んではいたのだが、いまいち良さがわからなかった。私はゴリゴリのハードSF好きなので、不思議な物語で結論もなくふわふわとした展開だったように思ったのだ。

 

正直いってあまりブンガクは得意ではない。物語らしい展開のないものも多いし、高校の頃、国語教師が熱く語る梶井基次郎の「檸檬」の何がいいのかさっぱりわからなかった。

 

何しろ私は科学オタクなのだから。ジョディーフォスターの「コンタクト」が好きで(SETI@HOMEしていた)、北海道に作られた異星間旅行の機械の幻想的な映像は、ブレードランナーの映像に似て美しかった。今頃になって原作のカール・セイガンの小説を読んだ。ビジネスで成功した富豪が永遠の生命を求めて人工衛星で暮らしていて、主人公が衛星から眺める地球を見て国境線なんかないと現実の政治の薄汚い駆け引きを超越した感慨にふけるのを読んで、あらためて、世界の国々の為政者になる条件として、人工衛星に乗せて緑の国境線のない地球を眺める研修を受けたらと思ったりして。現実の国どおしのパワーポリティクスを現実的に理解して、安保法制とかの理解もしているつもりだけど、こういう理想を忘れてはいけないとも思う。

 

話をもとに戻すと「ノルウェイの森」を読んで驚きだったのが、私より現実的で社会とうまくやっている知人がこういう本に共感をもっていることだった。私はこの本の主人公と似ていて友達も少なくて社会・集団とうまく付き合えない(全てではないが)という学生時代を過ごしてきて、周りの人間の主人公に対する観察、本質的に自分にしか関心がなく他人に迎合したくないという孤高の姿勢がわかる気がするのだが、知人がそういうことを理解できる人間だとは露程も思ってなかった。

 

結局、村上春樹が多くの人に支持されているのは、うまく周りの人間と付き合ってのうのうと楽しく過ごしている私以外の大勢の人達と思えていたのは違っていて、少なくない人々は心の内では様々な孤独感を抱えていながら、社会生活をしているのでしょう。

 

でも、結局はわからない。本当はほとんどの人は考えもしなくて楽しくしているのかもしれないし。

 

ちなみに、今日はつかの間の家族との生活から離れて単身赴任の島に戻って、ウイスキーを飲みながらこの本の下巻を読んだ。本にタイトルであるノルウェイの森ゴールデンスランバーなどを流しなら。俺って結構、村上春樹の世界に親和性があるのかもね。ギターの練習もしているし。

 

追記

amazonで書評を読んでみたけど、やはり登場人物の自閉的傾向を理解できなくて、気持ち悪いとかナルシストとか批判する人も多いです。実際、人は性格も様々だし、そういうものだと思います。セックス描写を悪くいう人がいますが、そんなに下品ではないんじゃないかな。愛のこもったセックス描写だとしか思えないんだけど。

 

文学作品にわかりやすい結論を求めてもしょうがない気がする。ノーベル賞作家カズオ・イシグロの「私を離さないで」も結論としてわかりやすいものはなかったと思うな。それにノルウェイの森の最後は尻切れで読者に想像させるものだけど、暗いものではないと思う。ただし世界で評価されているのは意外な気がする。外国人(一緒くたにくくることはできないけど)が何を評価しているのかには興味がある。