仮称なんたら日記

読書や音楽や映画、その他もろもろ書き綴ります。

本「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

この本の内容は、雑誌のコラムをまとめているため多岐に渡ります。
 
冒頭の沖縄戦の裁判のくだりが一番力が入っていたことは間違いないです。
慶良間島の集団自決が軍の命令だったのかという裁判は、以前、そういう論争があったという理解ぐらいで詳しく検証したことはありません。教科書問題にもなった話だと思います。
 
結論から言えば、慶良間島の集団自決は当事者への事実確認が不十分(ここでリベラルへの批判があります)なまま出来上がった軍命令説が、証言者の死後の手記により覆されたとまとめられています。当時の軍の責任者を、島の人が後日、島の慰霊祭に招くほど島の人から憎まれてはいないという事実からも、妥当性があるのではないか。
 
もう一つの主張は自分で読んだり聞いたりした事実とも符合します。この軍の隊長は集団自決命令は否定していますが、軍に投降を呼びかけにきた捕虜になった島の人を処刑したことは「軍紀でしかたなかった」・・・沖縄戦でスパイ容疑で殺害されたり、壕から追い出されたり、壕のなかで泣く子を殺させたりと、住民を守る軍隊でなかった。
 
満州でも、ソ連軍が参戦したときに、日本軍は満州に住んでいた日本人を残して(ソ連にアメリカとの休戦の仲介役を期待して衝突を避けるためという政府の指示)先に撤退し、残された日本人の悲劇の歴史も示して、結局は、日本軍は国民を守る軍ではなく、天皇の私兵で「国体」を守るための軍だったという分析をしています。
 
だから、国をしばる憲法に、自衛隊を明記して国民を守る軍隊という位置づけをはっきりさせるべきだという結論にもっていっています。このくだりは、最後の方で「リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください」(井上達夫著)を紹介していることにつながります。紹介されている井上氏の主張は興味深いです。この本も読んでみたい本ですね。